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快樂する仏蘭西映画とか

『大進撃』

2025.02.15 『大進撃』 1966
LA GRANDE VADROUILLE
監督ジェラール・ウーリー
ルイ・ド・フュネス  ブールヴィル


 第二次大戦下のフランス。ドイツに空爆攻撃を敢行したイギリス空軍機がパリに墜落。首都をふくむ領土の半分を支配下においたナチス・ドイツに追われる英国兵士の大逃避行。オペラ座の指揮者とペンキ屋のコンビが巻きこまれ、逃げに逃げ、非占領地区まで逃げつづけるドタバタ喜劇スペクタクル。
 4Kマスター版で復活したDVDを観た。


 こないだ読んだデュ・モーリアの『怒りの丘』Rule Britannia (1972)は、アメリカ軍によるイギリス本土占領という突飛な状況を背景にした仮想近未来小説だった。喜劇度からいえば、突出している。史実にもとずいた話もパラレル・ワールドの話も「同じ」に想えるほど、今は歴史の混迷が深いってことか。
 ナチスによるフランス占領は5年足らずだったが、喜劇の材料を豊富に提供した。60年経っても「新鮮」である。


 アメリカの新大統領は、隣国を「51番目の州に併合してやるぞ」とブラフをかけた。就任1ヶ月のあいだに、やりたい放題・いいたい放題。その一発目。
 二発目は、「ガザは偉大なアメリカの領土」宣言。イスラエルが爆撃で「廃墟化」した土地をアメリカが再開発する、と。絵に描いたようなショック・ドクトリン(災害便乗型資本主義)のプランだ。世界システムを不動産開発の手法によって組み替える。何のことはない。トランプ型孤立主義とは、「国際秩序の警察国家」路線の破廉恥な継続にほかならない。
 三発目は、進行中の「ウクライナに平和を」の欺瞞的交渉。ロシアの「野望」が、最終的には、ウクライナ併合(あるいは、ゼレンスキー政権を壊滅させ、ベラルーシ型の傀儡国家とすること)にあり、「プーチンの便所掃除係」であるトランプも、その目的にむかって全力をかたむけているわけだ。
 『大進撃』が新鮮さを喪わないのも、こういうメチャクチャな「国際情勢」のおかげなのかな。

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テーマの著者 Anders Norén